Diane Arbus ダイアン・アーバス




Diane Arbus
ダイアン・アーバス


アメリカ, 1923-1971

Diane Arbus ダイアン・アーバス

ドキュメンタリー写真の異才、ダイアン・アーバスは1923年にニューヨークの裕福なユダヤ人家庭に生まれました。父親はニューヨークの高級店が立ち並ぶ五番街に店舗を構えるデパートの経営者でした。14歳のとき、父の経営するデパートでスケッチの教室に通うことになり、そこで当時19歳のアラン・アーバスに出会いました。ダイアンはすでに非凡な絵の才能を発揮していましたが、その絵も止め、18歳になるとすぐアランと結婚しました。アランは写真学校に通い、ダイアンは助手兼スタイリストとしてふたりでチームを組んでファッション写真の仕事を始めるようになります。アーバスの父親はふたりに自分のデパートの広告写真を依頼し、共同でファッション写真を手がけ、やがてヴォーグ誌やグラマー誌で活躍するようになります。

その後ふたりはコンビを解消、ダイアンは写真家リゼット・モデルに師事しました。リゼット・モデルは当時アメリカで最も有名な写真の教師でした。そのモデルに励まされて、ダイアンは子どものころから直視するのを禁じられてきた人や場所を記録し始めます。両性具有者、身体障害者、服装倒錯者、双子、小人、施設に収容されている人……。


Diane Arbus ダイアン・アーバス

ダイアンの写真は雑誌「エスクァイア」誌に掲載されるなど、次第に評価され始め、1967年にはニューヨーク近代美術館で開催された「ニュードキュメンツ」展(ジョン・シャーカフスキー企画) にリー・フリードランダー、ゲイリー・ウイノグランドとともに選出されて注目を集めました。
こうした活動の一方で、アーバスは以前から慢性的な鬱病に苦しめられていて、肝炎をも患い、精神的に追い詰められていきました。

1969年になると、別居していた夫アランと正式に離婚、別居中も精神的に経済的にダイアンを支え続けていたアランでしたが、若い女優と再婚し、ハリウッドに移って俳優の仕事に本格的に取り組むことになったのです。

孤独への恐怖、慢性的な鬱病、自分の仕事に向けられる評価と敵意。
1971年7月26日、自宅の浴槽で死亡しているダイアン・アーバスが発見されました。自殺でした。翌年秋にはニューヨーク近代美術館で回顧展が開催されました。


Diane Arbus ダイアン・アーバス

10年にも満たないダイアン・アーバスの活動は、「写真のもつ力」を再構築するのに大きな影響を及ぼしました。彼女の作品は、それ以前の世代が抱いていた美の基準から背を向けたものでした。アーバスは形式的な美しさよりも精神的なものを重視し、社会の問題より個人を、はかなく偶発的な現象よりも不変で特徴的な部分を、繊細さよりも困難や危険を恐れない勇気に価値を見出しました。
彼女は、鋭い知性と激しく献身的な努力によってこうした直観を追及していったのです。

写真家として大変珍しいことですが、ダイアン・アーバスは人物の写真しか撮影しませんでした。それらのポートレートは、被写体とアーバス自身がお互いを信用し、認め合うことができるかどうかのぎりぎりの危険水域に達したという限界が生んだものだったかもしれません。
彼女がその被写体に興味を持ったのは、彼らが特定の哲学やライフスタイルの代弁者だからではなく、それぞれが独特の神秘性をもっていたからです。


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被写体のほうでも、アーバスが自分の内面に興味を抱いていることが理解できたからこそ、無条件でカメラの前に姿を現したのです。もしも、ただ単に見た目の珍しさから狩り出されたのだとしたら決して撮影を許可しなかったはずです。そしてまた被写体自身も間違いなくダイアン・アーバスに興味を持っていたのです。こうして時としてどちらが撮影者なのかわからなくなるような関係が生まれました。アーバスは、被写体が自分をどのように見ているかについても強い関心を払っており、自身のもつイメージと他者が抱く自分のイメージの違いを意識して撮影したといわれています。

彼女の写真に登場する強烈に個性的な人々は、その外見から我々が抱く固定概念をしばしば覆します。実際、性倒錯者やヌーディストといった外見上のカテゴリー分けは、奥底に潜む真実を隠すための隠れ蓑に過ぎないのです。



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ダイアン・アーバス / キュレーターおすすめの写真集
Diane Arbus: An Aperture Monograph

生前には自身の写真集が出版されることはありませんでしたが、ダイアン・アーバスが亡くなった翌年の1972年に刊行された写真集で、ニューヨークの近代美術館で開催された回顧展との協同で出版されました。アーバスの代表作です。


Diane Arbus Revelations

死後30年を経て開催されたサンフランシスコ近代美術館での回顧展の図録として、刊行されました。未発表作を多数含む約200点の作品、カメラ、手紙、日記など、 彼女の生涯についての詳細な資料も収録されています。