
Julia Margaret Cameron
ジュリア・マーガレット・キャメロン
写真が誕生して間もない時代のイギリスで、写真撮影を始めたジュリア・マーガレット・キャメロンは、非常に才能があり、理知的で、自由奔放で、さらに経済的にも恵また女性でした。
この時代の上流階級の女性は慈善事業やバラの栽培などを趣味とするのが一般的でしたから、キャメロンの選択はかなり変わっていたといえます。
夫が英国の高級官吏だったために、キャメロン夫妻にはヴィクトリア朝初期のイギリスで最もクリエイティブといわれていた多くの著名な友人がいました。そして、彼女の有名で評価の高い写真作品は、ほとんどがこの友人たちのポートレートです。
キャメロンは、鶏小屋を改造したスタジオに友人を一人ずつ連れて行って座らせ、納得のいく明るさが得られるまで熱い天窓からの光に長時間さらし続けたといいます。
詩人のテニスン、ダーウィン、カーライル(スコットランドの批評家・歴史家)、画家で彫刻家のジョージ・フレデリック・ワッツ、アメリカの詩人ロングフェロー、天文学者・数学者のジョン・ハーシェル……。
これら各界の著名人たちは、撮影時にキャメロンの容赦ない指示に耐え、彼らの間ではしばしば撮影時のエピソードが話題になったほどです。
一方、キャメロンはこう述べています。
「私はカメラの前にいる人の肉体的な特徴を描写することはもちろん、内に秘められた偉大なものを忠実に記録することに全精力を傾けました」
こういった著名人の撮影は、彼らが休日に訪問したときに限られていました。それ以外の大半の時間を彼女は「美」に関する撮影、つまりアーサー王物語、神話、テニスンの詩やラファエルの絵を題材にした写真に費やしたのです。
友人や女中、その子どもたちをモデルに使い、聖書に出てくる聖女やルネッサンス期の天使、アーサー王物語の登場人物に見立てて撮影しました。
このような作品は、写真は現実を記録するためのもので「フィクション」の分野を表現するのには適していないと思われていた過去の時代には正しく評価されないこともありました。
にもかかわらず、右のような写真を見てみると、インパクトのある構成で、雄弁で、そしてとても感動的な、見事な絵のようです。

