
Lewis W. Hine
ルイス・W・ハイン

1874年にアメリカのウィスコンシンで生まれたルイス・ハインは、シカゴ大学で社会学を学びました。さらに、ニューヨーク大学とコロンビア大学で学業を続け、倫理文化の学校で教鞭をとりました。学生のなかには ポール・ストランド がいて、ハインが彼に写真を紹介したといわれています。
ハインが本格的に写真を始めたのは30歳を過ぎてからですが、もともとの才能や訓練によって、当時の社会状況を調査し、発表する手段として写真を活用するようになります。

現在ではルイス・ハインは写真家としてよりも、おそらく社会的改革者として知られているかもしれませんが、ハイン自身、写真が何かを「証明する」とは考えていませんでした。
むしろ、もし写真に社会を改革する力があるとしたら、まずは写真を見た人々の心に影響を与えていこうと思ったのです。
ハインの写真の大半は、社会に対する単なる抗議ではなく、生命力にあふれ、熟練した技術やみごとな筋肉、粘り強さを持った労働者に対する賞賛に満ちていました。
彼の写真にはいわゆる「庶民」と呼ばれていた人たちに対する同情ではなく、愛と尊敬の念がこめられています。

ハインはまた、「グラフレックス」という当時最新鋭の新型カメラの達人でした。
それ以前、つまり写真が発明されて最初の50年あまりの間、写真家は撮影の前にまず大型のカメラを組み立て、カメラの後ろ側のすりガラスに上下さかさまに映る像のピントを合わせ、それから初めて感光板をカメラにセットするという手順を踏まなければなりませんでした。
一度感光板がセットされると、写真家はもう構図やピントを変更することもできず、ただシャッターを押すだけです。

しかしグラフレックスの登場によって、写真家はシャッターを切るその瞬間まで撮影する対象を見ていることができるようになりました。これによってフレームの端に被写体を配置することができたり、自由にアングルを変えたりすることが可能になりました。そして最も重要な被写体だけに集中でき、それ以外の背景は意図的にピントをぼかしたりできました。
ルイス・ハインはこのカメラの特性を充分に利用して、力強く人々の心を打つ写真を撮影したのです。
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ラッセル・フリードマン著。1908年から1918年まで、ルイス・ハインはアメリカ中を旅して過酷な児童労働の実態を撮影しました。写真家ルイス・ハインの生涯や子どもの人権について日本語で読める唯一の本です。

こちらは英語版のペーパーバックですが、価格が手頃なので入門書としておすすめです。
- 写真は暗闇に灯りをともし、知られずにいた部分に光を当てることができるのです。
- The History Place (英語)
- Art Institute of Chicago (英語)