土門拳




Ken Domon
土門拳 (ドモン・ケン)


日本, 1909-1990

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土門拳

日本に限らず、世界中どの国でもいえることですが、「絵画」という伝統的な芸術は、写真にとってはよき先輩にあたると同時に、少々やっかいな存在でもあります。というのも写真が絵画の代替物であるという位置づけが長い間続いたからです。

この問題は、西洋よりも日本のほうが深刻でした。なぜなら、ヨーロッパの風景画の複雑な光や色の描写を模倣するよりも、北斎に代表される浮世絵の極限までそぎ落とされた大胆でシンプルな構図を模倣するほうがずっと容易だからです。こうした理由から、第二次世界大戦以前の日本の写真は、浮世絵の模造品のような、シンプルな風景を撮影したものがほとんどでした。



土門拳

土門拳は、それまでの「浮世絵」的な写真という呪縛を打ち破った写真家でした。

土門拳は1909年10月25日に山形県酒田市で生まれました。報道写真から出発した土門拳は、その後徹底したリアリズム写真を確立しました。「霧のなかにぼんやりと浮かぶ美しい山」を撮影するよりも、対象物を明確に正確に描写するほうがより挑戦的であると捉えていました。



土門拳

そして「室生寺」「築豊のこどもたち」「古窯遍歴」「日本名匠伝」ほか数多くの作品を残しました。

1957年には広島を訪れ、原爆の被害者やその家族の姿を取材しました。そこでも彼独特の熟考、方法論、無私無欲な態度で撮影したといわれていますが、同時に撮影中そっと涙を流すこともあったともいわれています。



土門拳

後年、彼は昔の日本人が造ったもの、特に寺院、仏像などの日本の美を撮影し、最高傑作といわれる「古寺巡礼」を完成させましたが、被写体が変わっても「真実を追究し、過去への郷愁ではなく現在を撮る」という姿勢は終生不変でした。その作品はどっしりとした安定感があり、対象を的確にとらえ、客観性を保ち、美辞麗句を完璧に排したものです。

2度の脳出血の闘病後は右半身付随となりながらも撮影を続けていましたが、1979年に脳血栓を発症、以後11年間こん睡状態のまま入院生活を続け、1990年に80歳で死去しました。




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