
Berenice Abbott
ベレニス・アボット
ベレニス・アボットは、1920年代、第1次世界大戦後の空前の大繁栄をとげた中西部出身のアメリカ人で、その後芸術活動の拠点をパリに移しました。
1921年、「彫刻家」としてパリに到着したアボットは、フランスの彫刻家エミール・アントワーヌ・ブールデルのもとで創作活動を続けました。
1923年にアボットはマン・レイの写真スタジオのアシスタントになり、その2年後ウジェーヌ・アジェの写真を初めて目にすることになります。
アジェの作品に満ちている「写真」という表現手段の力強さに決定的な衝撃を受けた彼女は、写真を自分のライフワークとすることを決意します。
1926年、アボットは自分自身の写真スタジオをオープンし、3年間にわたりパリの知的階級に属する著名人などのポートレートを撮影しました。
この時代のパリには、アーティスト、有名人、社交界に出入りする人々が無尽蔵に存在し、アボットは彼らを多数撮影したのです。
1927年、アジェの作品に心酔していたアボットは、アジェにポートレートを撮影させてくれるよう説得しました。
撮影後ほどなくしてアジェは亡くなります。生前彼は生活のために2621枚ものネガをフランス政府に売却、死後も友人や相続者が2000枚以上のネガを売ってしまっていましたが、アボットはなんとか残りを購入することに成功し、世界に紹介することに尽力しました。
アボットが撮影したポートレートのうち、最も有名なものはアイルランド出身の作家ジェイムズ・ジョイスの写真です。
陰気な、奇妙なほど生気のない光があたりを包み込み、この作家の飾りピン、手、右耳、高級な帽子、エレガントな前かがみが示す深い疲労感を強調したり美化することなく淡々と描写しています。
写真の中のジョイスはまるで、あまりに膨大な言葉をきっちり正確な順序に並べるという途方もない作業に憔悴しきっていて、生きているのがやっとという風に見えます。
当時ジョイスは肉体的に疲労困憊していただけでなく、作品の著作権侵害、妻の重病、締め切り、また、悪化しつつある視力にも苦しめられていました。
イギリスの出版社主だったハリエット・ショー・ウィーヴァーに宛てた手紙の中にこう書かれています。
「自分が20歳の若造だと思う瞬間もあるが、一日の半分は自分が965歳だと感じる」
もしかすると聖書に登場する969年生きたといわれるユダヤの族長メトシェラを意識して「969歳」と書くつもりだったかもしれませんが、ジョイスの几帳面な性格からしてメトシェラより4歳だけは若いという彼ならではの表現だと考えるほうが妥当でしょう。
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アボットの作品群のなかでも人気のあるニューヨークを撮影した写真集の決定版。1930年代のニューヨークがいきいきと描写されています。ウジェーヌ・アジェに大きな影響を受けたというアボットが、ニューヨークをどのように切り取ったのか、非常に興味深い写真集です。

およそ100枚に及ぶ30年代ニューヨークの写真たち;建設中のロックフェラーセンタービル、橋の上からのドラマチックな眺め、ワシントンスクエア、路地には洗濯物を並べた古い住居……。

1935年、アボットはニューヨークを取材する5年計画のプロジェクトを開始し、19世紀風の都会から摩天楼がそびえ立つメトロポリタンへと変貌してゆく様を記録しました。それから60年後、ニューヨーク在住の写真家ダグラス・ルヴィアがアボットの足跡を訪ね、厳格なまでに細部までこだわって撮影しました。ここに紹介されている写真は、アボットの撮影を同じ日付、同時刻、しかも同じタイプのカメラを使って撮影されたものなのです。

ノンフィクション作家ジョージ ・サリヴァンによる、アボットの人生と作品に迫る年代記。と同時にそれは20世紀前半のニューヨークにおけるアート・シーンのドキュメンタリーにもなっています。
- 私は写真家になろうと決心したわけではないのです、たまたまそうなっただけです。
- Art Institute of Chicago (英語)
- J. Paul Getty Museum, Los Angeles 9 works online by Abbott (英語)
- Berenice Abbott at the Metropolitan Museum of Art, New York City (英語)
- Berenice Abbott at the National Gallery of Art, Washington D.C. (英語)
- San Francisco Museum of Modern Art (英語)
- Brooklyn Museum, New York City (英語)



































